No.54 阪神本線芦屋・西宮・甲子園・尼崎・野田駅 朝ラッシュ時(7:10~8:40)

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 【調査条件】
 ・平成18年11月13日(月)
 ・芦屋、西宮、甲子園、尼崎、野田駅の梅田方で上り列車の発車時の混雑を各駅14分ずつ定点観測
 ・運行状況については、ピーク帯を中心に一部列車に2~3分の遅延が見られた以外はほぼ正常

【調査目的】
 ・10/28ダイヤ改正の阪神本線の朝ラッシュ時の利用状況を把握すべく、現状を確認する。

【調査結果の要点】
 ・新設の区間急行の利用率は上位優等と比較して低い。
 ・区間急行新設により混雑緩和したのは直通特急と急行で、区間特急はむしろ混雑率が高くなった。
 ・梅田に先着する優等に利用者は集中している。

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【考察】

 阪神新ダイヤの朝ラッシュ時を調査するにあたっては、1日で各駅の状況を探るため、主要駅で1サイクルずつ見るという方法を取りました。よって各調査駅の時間帯が異なるため、区間ごとの比較を絶対値で評価することが出来ません。そこで、各駅の傾向は傾向として捉え、全体としてはサイクル中の各列車の分担率で比較することにしたいと思います。

<全体の混雑分担率の推移について>

 グラフをご覧頂けると分かりますが、直通特急、区間特急は5駅とも分担率が高く、急行は甲子園から尼崎にかけて利用率が増加していることが分かります。この分担率の高い部分に共通している事は、梅田に先着するという事になるでしょうか。区間急行は甲子園始発で新設されたものの、座席が埋まる程度の利用率にしかならないため、準急と同等の機能しか有していないことが分かります。混む上位優等と空いている下位優等・普通という傾向がハッキリ出てしまっているのが新しいダイヤと言えましょう。

<芦屋駅の状況について>

 まだラッシュ時の早い時間帯であること、芦屋は比較的混まない区間であることもあり全体的には空いていました。ホームを観察してみたところ、急行、普通、準急と連続して到着するのですが、これら列車から区間特急に乗り換える人が下車して、ホームの区間特急待ち列が少しずつ長くなっていく状況であることが分かりました。大半が下車してしまうので、出発時を見ると急行はやや立ち客が居る程度を保ちましたが、準急と普通はほぼ座れている状況でした。

 区間特急が到着すると、ホームの長い列が一気に捌け、2分後の直通特急をあえて待つ人は少ないようですが、それでも芦屋発の段階では直通特急のほうが区間特急より混んでいるのは、三宮始発の区間特急よりも姫路発の直通特急のほうが三宮発の時点で混んでいるからだと思います。そういう意味ではバランスの良い続行運転と言えるのかもしれません。

<西宮駅の状況について>

 芦屋が下位種別から上位種別への乗換駅として機能していましたが、西宮は芦屋と異なり駅自体の乗車がメインという状況でした。理由として芦屋との間に香枦園と深江の2駅しかなく、いずれの駅も香枦園における区間特急乗換が便利なため、梅田に向かうならば敢えて西宮で直通特急に乗り換える必要性がないのでしょう。

 梅田への先着列車として直通特急と急行がありますが、急行が直通特急の2分後というダイヤなので、12分ぶんを直通特急が分担しており、一気に混みました。

<甲子園の状況について>

 直通特急の利用率が西宮と同等であり(甲子園は通過なので理屈では同じになる)1サイクルずれるものの、ほぼ同等の比較が出来るかと思います。その前提で見ると、区間特急の混雑率が一気に2倍になっている事が目立ちます。何故にこれだけ混むのか?という事なのですが、ホームを観察することで理由が見えてきました。簡潔に書くと、甲子園自体の集客があること、準急からの乗り換えが多いこと、更に直前に設定されている区間急行の人気が無いことが挙げられます。準急からの乗り換え客はダイヤパターン上、西宮と今津の2駅からの利用が多いと思われ、特に実質的に準急しか利用できない今津からの流れが多いと推察します。

 今回のダイヤ改正で新設された区間急行ですが、残念ながら着席狙いの人にしか利用されない状況でした。関東ではあまり考えられない状況ですが、引き上げ線から入線してきてドアが開いてもすぐには座席が埋まらず、接続する準急が到着して乗り換える人が乗り込んでやっと座席が埋まるような状況です。ホームには区間特急待ちの人が多数列をなしており、梅田先着であることが利用者にとって大きい事が伺えました。

<尼崎の状況について>

 甲子園と比較すると急行のみ利用率が急激に高くなっています。旧ダイヤ時はこの尼崎の段階で急行が最混雑になっていましたが、区間急行が設定された事により鳴尾、武庫川利用者が幾分シフトしたためか、混雑率は幾分緩和されたようです。直通特急も直前に区間急行が設定されたことにより、多少のシフトがあったのか急行と同等の利用率になりました。区間急行が集客しているといっても立ち客少々の100pが限界というのが利用率のバランス上課題という気もしますが、そもそも輸送力に対して輸送量が少ない(全列車が満員になるような状況ではない)ことから、上位優等が混む状況は妥当という感じがします。

<野田の状況について>

 時間帯がピークを過ぎており、全体の利用率が下がってきています。そのため分担率の観点で尼崎と比較すると、準急と普通の分担率が上がっているのに区間急行が上がっていないことが分かります。区間急行が尼崎~野田間がノンストップで集客しないのに対して、準急は杭瀬、千船、姫島に停車しますから当然と言えば当然なのですが、野田の時点で区間急行より普通のほうが混んでいる車両があることから、区間急行は下位種別のフォローの観点で停車駅を増やしても良いのかなと感じた次第です。

<まとめ>

 新設された区間急行に注目して調査を行いましたが、以上のような状況であったため、位置づけがイマイチ中途半端という印象を受けました。停車駅が少ない設定になっているにも関わらず待避が多く、急行と対となる位置すなわち区間特急と直通特急に挟まれたスジであるというダイヤ構成上のネックがあるとはいえ、もう少しやりようがありそうな感じがします。

 そうは言っても今回、区間急行が設定されたことにより、直通特急と急行の混雑緩和は図ることは出来たと言えますから、今後は区間特急の混雑緩和方法を検討していくことになるのでしょうか。

 今回の調査結果から導き出される一番簡単な改善方法は区間急行を梅田まで先着させることだと思いますが、現在のパターンを維持する限り区間特急のスジを寝かす必要が出てしまい、利用率の高い列車の速達性を犠牲にしてまでやる必要はないかなと感じました。区間特急が混んでいると言っても、旧ダイヤの直通特急・急行並なら、最速達優等として問題なしと判断することも出来ますからね。

 以上のことから、個人的な見解として区間急行は上位優等の混雑緩和を図るのではなく、区間特急待避を千船にし(追加停車)、併せて福島に停車させる事により梅田付近の近距離利用の利便性を図るほうが良いのかなと考えています。